自分の考え方や物事の捉え方が、身体にまで影響する。そんなこと、本当にあるのでしょうか。
最近イェール大学から報告された研究によると、65歳以上で、時間の経過とともに認知機能や体力が改善している方々がいるそうです。おもしろいのは、加齢に対して肯定的な見方を持っている人ほど、そうした改善がみられやすかったという点です。
つまり、「歳を重ねても記憶力や体力は衰える一方ではないのかもしれない」というものの見方が、その後の行動や身体の働きに影響しているのかもしれない、ということです。
ただし、考え方や捉え方が身体に及ぼす影響は、良い方向にだけとは限りません。逆に働くこともあります。
これは、不安の診療でもよく目にすることです。たとえば動悸や息苦しさを感じたとき、「心臓の病気ではないか」「このまま倒れてしまうんじゃないか」と考えると、脳は危険が迫っていると判断し、身体はさらに警戒モードに入ります。すると心拍は速くなり、呼吸は浅くなり、筋肉もこわばる。その結果、動悸や息苦しさはいっそう強く感じられて、「やっぱり危ないんじゃないか」と、不安がふくらんでいきます。つまり、不安な考えが身体に影響を与え、その身体の変化がまた不安を強めていく。そんな悪循環に入り込んでしまうことがあるわけです。
見方を変えれば、身体に起きた変化に対して、「これはそこまで心配しなくても大丈夫」と受け止められるようになると、不安もいくらか扱いやすくなるかもしれない、ということでもあります。
もちろん、考え方だけで若返るわけでも、不安が消えてなくなるわけでもありません。ただ、心と身体は切り離された存在ではなく、自分の状態をどう「捉える」かは、思っている以上に大きく効いてくるようです。身体の変化に、ある程度おおらかに構えてみる。そんな視点を少しだけ持つことが、今日の気持ちだけでなく、明日の体調にも、静かに影響を与えるのかもしれません。


